みぞおちから足が生えている



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ランニングにおいて「みぞおちから足が生えている
ように感じながら走りなさい」とアドバイスされる
ことがあるそうです。

メイナード・ファーガソンはクリニックで「太もも
まで息を吸いなさい
」と言ったことがあります。

これらの指導の背景には、ある共通した筋肉が関与
していると考えられます。それは腸腰筋、その中で
も特に大腰筋です。

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大腰筋は、胸椎12番および腰椎1〜5番の側面と大腿
骨の上端をつなぐ長い筋肉。背骨で脚を吊っている
ような構造をしています。上半身と下半身をつなぐ、
文字通り身体の「要」となる重要な筋肉です。

ランニングにおいて「みぞおちから足が生えている
ように感じる」のは、大腰筋をうまく使うことをラ
ンナーに求めているのだと理解できます。大腰筋は
脚を引き上げるための筋肉なので、これを効果的に
使うことがよい走りの前提となるわけです。

同時に大腰筋は呼吸筋でもあります。深く息を吸う
とき、そして息を吐き切るときに動員されます。大
腰筋は大腿骨(脚の骨)上部に付着しているため、
息を深く吸ったときに、太ももの付け根あたりに刺
激を感じる場合があります。

ファーガソンは大腰筋の緊張を感じるほど深く息を
吸っていた。と同時に、大腰筋のような深部にある
インナーマッスルを感じられるほど身体感覚が研ぎ
すまされていたともいえるでしょう。腹式呼吸を超
えた「脚式(きゃくしき)呼吸」ですね。

また、骨盤底まで刺激が伝わるような深い呼吸も可
能です。この場合は「底式(ていしき)呼吸」と呼
んでもいいでしょう。さらに、荘子には以下のよう
な言葉があります。


 真人の息は踵(くびす)を以てし
 衆人の息は喉(のど)を以てす


踵はカカトのこと。普通の人は喉のあたりで浅い呼
吸をするが、すぐれた人はカカトからのように深い
呼吸をするという意味でしょう。

腹式→脚式→底式→踵式(しょうしき)と、どんど
んハイレベルな身体操法になっていきます。特に荘
子の言葉には立ち方のポイントなども含まれている
ように思われますので、その身体性の高さと言語表
現力に驚かされます。