タンギングの可能性



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監修:杉山 正



【インデクス】
タンギングはみんなの課題
アーティキュレーションの洗練
基本は相対シラブル
タンギングとシラブルの組みあわせ
スラーのついたフレーズ
あらゆる組み合わせを練習
教則本スムーズタンギング
たとえば12種類の組み合わせ





<タンギングはみんなの課題>
金管奏者を対象に、どんなことに対して苦手意識を
感じるかというアンケート調査を行なったことがあ
ります。その結果、女性の苦手トップ3は


 1.スタミナ
 2.タンギング
 3.音量



男性の苦手トップ3は


 1.音色
 2.音程
 3.タンギング



でした。設問や選択肢の設け方によって回答は変わ
るかもしれませんが、男女ともタンギングが苦手の
上位に入っているのは興味深いと思います。






<アーティキュレーションの洗練>
アーティキュレーションとは、音楽の演奏技法にお
いて、音の形を整え、音や音のつながりに強弱や表
情をつけて旋律を区分すること。

一般に合奏練習でのアーティキュレーションという
と、スラーやスタッカート、アクセントなどの記号
の付け方や解釈のことを意味します。

タングマジックではタングとエアの開発がトレーニ
ングの中心ですので、アーティキュレーションに重
点を置いた練習をします。文字どおり「息をあわせ
る」わけです。






<基本は相対シラブル>
まず「図1」をご覧ください。このような譜面を演
奏するとき、頭の中ではどのように考えますか?

(図1)
articulation1.jpeg


「ソドソド」「トゥトゥトゥトゥ」「タタタタ」な
どいろんな歌い方があるでしょう。タングマジック
ではこれをどう歌うのか、正解を述べる前に、順を
追って説明しましょう。

もっとも基本となるのは相対シラブルです。相対的
に低い音は「ア」、相対的に高い音には「イ」とい
う音(シラブル)を与え、そのように頭で歌いなが
ら演奏します。

したがって「図2」のような場合は、「ア→イ」と
歌います。これによって舌のポジションが確実に
「低→高」となりエアの流れを速くするのです。

(図2)
articulation2.jpeg


(図3)
articulation3.jpeg


図3(教則本「ハイ・エア・ビルド〜音域5オクター
ブの開発〜」から転載)をご覧ください。「ア→
イ」と発音することによって、舌の位置が変化する
ことがわかります。

もし図2のフレーズをユニゾンで演奏するとき、ひと
つの楽団の中に「ア→イ」と歌う人のほかに「ド→
ソ」と歌う人や「トゥ→トゥ」と歌う人が混ざっ
ている場合、それぞれ舌のポジションや動きが異な
ることになります。

このように舌の運動が各自バラバラであることは、
音程、音量、音色のすべてにおいて、アンサンブル
をまとめるためのリスク要因となります。






<タンギングとシラブルの組みあわせ>
もう一度図2をご覧ください。この譜面にある2つの
音符にはスラーがついています。最初のドは吹き始
めですから舌をつきますが、次のソはタンギングし
ません。つまりタンギング「あり→なし」と吹くこ
とになります。

では、タンギングとシラブルをあわせたとき、図2
はどのように歌うべきでしょうか。答えは「タ→
イ」です。ここでの相対的低音ドはタンギングをす
るので「タ」、相対的高音ソはタンギングをしない
ので「イ」となるのです。

さて、いよいよ図1をどう歌うかについてです。こ
のメロディを図4のように前半と後半二つに分け、
まずAの部分だけに注目してください。

(図4)
articulation4.jpeg


ここでは相対的高音がソ、低音がド。どちらの音符
もタンギングしますから「ティ→タ」と歌います。

つぎにBの部分は、相対的低音がソ、高音がドで、
やはりタンギングしますので「タ→ティ」となりま
す。そしてAとBを続けて歌うと「ティ→タ→タ→
ティ」。これが図1の歌い方なのです。

この歌い方を楽団内の金管全員で共有すれば、比較
的短い時間で音程、音量、音色がそろい始めます。

これがタングを使った合奏練習の基本。この方法を
取り入れるとサウンドがどんどん澄んでくるので、
アンサンブル・クリーニングと呼んでいます。






<スラーのついたフレーズ>
では、図5のようにスラーがついたフレーズの場合
はどうなるでしょうか?

(図5)
articulation5.jpeg


最初の音ソはタンギングします。第2音ドはしませ
ん、第3〜4音はどちらもタンギングします。ですか
らこれは「ティ→ア→タ→ティ」と歌います。

ここまでは原則通りですけれども、次のような位置
にスラーがつくと、少し事情が変わってきます。

(図6)
articulation6.jpeg


原則通りに歌うと「ティ→タ→ア→ティ」となりま
す。これでうまく演奏できればそれでも構いません
が、第3音ソが吹きにくい場合が出てきます。第2音
から第3音がスラーで高い音へ向かうので、息のス
ピードを上げるサポートが必要だからです。

この第2音→第3音の「タ→ア」を、エアのパワーを
アップするだけで乗り越えられない場合は、補助シ
ラブルの「エ」を使い、「ティ→タ→エ→ティ」と
歌います。

タングとエアの関係はかなり複雑ですので、歌い方
はフレーズごとに対応する必要があります。ここで
は基本中の基本についてのみ説明しました。






<あらゆる組み合わせを練習>
アンサンブル・クリーニングの中心となるのは、こ
の「シラブル/タンギング/スラー」のありとあら
ゆる組みあわせを練習することです。

シングルタンギング、Kタンギング、ダブルタンギ
ング、スラーとタンギングの複合など、ひとつのフ
レーズに対して十種あまりのパターンで練習するこ
とで、まずは個々人のアーティキュレーションを洗
練していきます。

そのようにしてタングとエアのコントロール能力を
高めつつ、合奏においては、みなが同じ歌い方をす
ることでアーティキュレーションをそろえます。

この方法は、トランペット、フレンチホルン、トロ
ンボーン、ユーフォニアム、テューバ、フリューゲ
ルホルン、コルネット、ビューグルなどあらゆる金
管楽器に効果があります。

また、管弦楽、吹奏楽、マーチング、ジャズ、ラテ
ン、ロック、ポップなどジャンルを問わず応用する
ことができます。

さらに少しくふうを加えれば、木管楽器、弦楽器、
打楽器とも効果を共有することが可能です。

よいアンサンブルの前提となるのは、文字通り「息
があった」演奏。アンサンブル・クリーニングの手
法を徹底することで、短期間で「息をあわせ」、美
しいサウンドを作り上が期待できます。

タンギングは金管演奏を根本から変える可能性を秘
めているのです。






<教則本スムーズタンギング>
ト音

ヘ音





<たとえば12種類の組み合わせ>
ここに図7のようなメロディがあったとします。


(図7)
ST_13_1.jpg


これをシラブル、Tタンギング、Kタンギング、ス
ラーなどの組み合わせ(これをモデルといいます)
を変えて吹いてみましょう。どんなバリエーション
を考えますか?


(図8)※譜面クリックで拡大
ST_13_2.jpg


ひとまず6パターンだけ例示してみました。これは
教則本「スムーズタンギング」に掲載されているも
のの一部です。実際には同書ではこのメロディに対
して12パターンのモデルを示しています。

同じフレーズを演奏するのでも、モデルが違えば舌
の動きがまったく異なることに気づかれるでしょう。

ひとつのメロディをいろんなキーで、いろんなモデ
ルで練習することによって、指と舌と息の連動を徹
底的にみがきあげていくのです。