息の「圧とスピード」研究の現状(概要)



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さまざまな

金管・木管を問わず、息の「圧」「スピード」および「量」
に関する議論や研究はさかんに行なわれているようです。


1.曽我部清典(そかべきよのり)氏のサイト
2.上記HP内の論文リンク
3.上記論文内の該当ページ(1)
4.上記論文内の該当ページ(2)



人工の口を製作し、唇のまわりで起きる気体音響的な
現象を数値的に把握しようという意欲的な実験です。

このテーマについては、ほかにもいろんな方が興味
を持ち、情報収集や共有を進めておられます。


5.サイト「リード割り・息のスピード
6.考える葦笛「息の圧力とスピードについての最近の研究
7.九州芸術工科大学・鏑木時彦准教授の研究(1)
8.九州芸術工科大学・鏑木時彦准教授の研究(2)
9.九州芸術工科大学・鏑木時彦准教授の研究(3)



用語はしく共有されているか

この種のテーマを扱うときに重要なのは、演奏家、
指導者、学習者、そして研究者が、みな同じ意味で
同じ用語を使っているかを精査する必要があるとい
うことです。

たとえば研究者が「圧力」という場合と、指導者が
「圧力」という場合とは同じかどうか。また、それ
を学習者がどう解釈するかという問題です。

上述サイトから用例を拾ってみましょう。


●息の量(圧力)を増やすにはどうしたらよいですか?
●毎回のように「息の量が足りない」「息のスピードがない
 「もっと息の圧力をかけて」と、指導された。
●唇の駆動源は息の圧力である
●舌を高くすることで口の中の気圧を高めて
圧力(ポテンシャルエネルギーと呼んでいる)を高める要因として
●演奏する時の肺の圧力が一定だとすると
●できるだけ空気の流れを抑えた方が、より効率的に唇を振動させられる
●プロの奏者が声門を閉じぎみにして、呼気の量を少なくしているのは、
 理にかなったこと
息の流れのエネルギーがそこで大きく損なわれる
息の圧力と口の中の共鳴の関係
●口の形を変えることによって、口内の共鳴特性を変え、音程を調節して
 いるという仮説
●マウスピースの唇にかかる圧力
●供給される空気の圧力
口の中の圧力、マウスピースのカップ内の圧力管内の圧力
●高い音に固定させるためには、供給する圧力を上げ、マウスピースへの
 圧力
も上げなければならない
●唇の間に流れる流量、そして唇のそれぞれの側に掛かる圧力の非線形な
 関係
音響的な流量については、マウスピースの圧力とトランペットの計測さ
 れたアドミッタンスの複合から計算される



議論を有意義なものにするためには、「圧力」「ス
ピード」「流れ」「エネルギー」「量」などの用語
を定義し、少なくとも以下の諸点について明確にし
ておく必要があると思われます。


1.圧力と量の関係
2.圧力とスピードの関係
3.量とスピードの関係
4.圧のかかる部分(腹腔、肺、胸郭、声門、舌根、
 口蓋部、舌尖、アパチュア、カップ内、スロート
 内、バックボア内、リードパイプ内など)



これらの意味が正しく共有されていることを確認し
ないならば、議論はすれ違う可能性があります。



指導語の役割

自然科学的事実の解明とは別に、もうひとつ別の側
面があります。それは教育学的な論点です。

シカゴ交響楽団の名テューバ奏者・指導者として知
られるアーノルド・ジェイコブズは、以下のような
趣旨のことを述べています。
ティーチング・ブラスの研究より


呼吸現象の実体は「胸郭が拡張するから息が入り、
胸郭が縮小するから息が出る」わけですが、ジェイ
コブズはそれを知った上で「息を吸うために拡張す
るな、拡張するために息を吸え」と逆のことを教え
たそうです。

つまり実際の演奏においては、身体を操作しようと
するのではなく、演奏を(音楽を)操作することに
注意を向けなさいという教えです。



科学的事実と、それを指導の現場でどのように言語
化して伝えるかの間には、解決すべきデリケートな
問題がいくつもあります。

音楽家の究極的な目標は、よい音楽を演奏すること
です。そのひとつ手前に、うまく楽器を鳴らすこと
があります。科学的事実というのは、そのさらに手
前にあるものでしょう。

科学的には正しいはずなのに学習者が上達しないと
いうのでは本末転倒ですから、指導現場では客観的
事実をカッコにくくったうえで、指導者や学習者の
主観を重視する場面が多くあって当然でしょう。

「何が正しいのか」を追求することはもちろん必要
ですが、「何が効果的か」はさらに重要なテーマだ
と考えられます。

この視点に立って積極的な情報共有が行なわれるな
ら、指導法のバリエーションも増えるため、たいへ
ん有意義だと思うのですがいかがでしょうか。